チロルの空想世界

オリジナル小説を載せてます。良かったら読んでいってくださいね。

2014-01-01から1年間の記事一覧

アコルト(5)

学校帰り、繁華街へ向かい大きなCDショップで簡単なピアノの楽譜を購入した。 クラッシック楽譜の棚は店の隅のほうで申し訳程度に置いてあるだけだった。 何冊か手にとって見てみたが、流石に子供用の童謡などが載っている楽譜は嫌がるだろう。 そう思って今…

アコルト(4)

俺は大学から電車で30分もかかる場所にマンションを借りている。 最寄り駅は鈍行しか止まらず、回りにはコンビニが一軒と駅と反対側に小さなスーパーがあるだけで便利な場所とは言えない。 どうしてこんな所に住んでいるのかというと、入学当初に大学の目…

アコルト(3)

「アラベスクだろ? 弾きたい曲は」 逃がしたくなかった。 まだ聞きたいことがたくさんある。 名前は何なのか? 学部は? 学年は? どうしてピアノを弾いているのか? 正直、曲名は自信がなかったのだ。 俺が知っている曲の中で先ほどの音の流れに思い当たる…

アコルト(2)

大学にピアノが置いてある教室なんて数えるほどしかない。 その上で、ここに音が届いているということを考えると、場所はC棟の大講義室だ。 俺は寒さに肩をすくめながらC棟に急いだ。 食堂やコンビニが入っている棟には学生がたくさんいたが、C棟の周りに人…

アコルト(1)

昼休みだった。 俺は大学のベンチに座って菓子パンをかじっていた。 外気は冷たく、吐く息が白く霧散していく。 時折、喫煙しようと校舎から出てくる学生がいるが、少しふかすと、すぐに建物の中に逃げ込んでいく。 こんな寒い日に外で食べている学生は俺く…

次のお話の構想中

次はこんな感じの子のお話書きたいなぁ。 可愛くてでもちょっと怖くて危うい感じの子。

姉妹(2)

幾つもの季節が通り過ぎていった。 私は大学卒業後、都心部の会社に就職。慌ただしい毎日の中で主人に出会い、結婚、子どもにも恵まれ、平凡ではあるがそれなりに幸せと呼べる人生を綴っていく。 そんな日々に不穏な音はかき消され、徐々に影を薄めていった…

姉妹(1)

私が学生の時、妹が死んだ。 先天的に心臓が弱く、もともと人より短い寿命だった。 だが死因は交通事故だった。 まだ18歳だった。 妹が生まれてすぐ病気のことが医者から知らされ、それにより家族、親戚、近所の人たちまでも、事情を知る周りの大人たちに…

伯父の家(2)

案内された居間は、小さいころ見たものとはすっかり姿を変えていた。 記憶の中で洋室仕様はずの部屋は、6畳と8畳二間の和室になっていた。 8畳の部屋の中央は掘りごたつになっていて、川の流れのような木目がついた欅の座卓が置かれていた。壁に沿って腰…

(雑記)アイコン絵

小説途中ですがアイコン用の絵を描いてみました! アイコンにすると小さくなりすぎて何か分かりませんね(^_^;) もっと考えて描いたほうが良かった(反省) また気が向いたら描き直す予定ですー。

伯父の家(1)

伯父から電話があったのは大学が夏休みに入ってすぐのことだった。 貴和の成績が落ちているので家庭教師をしてほしいという。 貴和は伯父と前妻の間に出来た子で、現在高校に通っている。 お小遣いは弾むという甘い言葉に、丁度バイトを探していた私は快く受…