チロルの空想世界

オリジナル小説を載せてます。良かったら読んでいってくださいね。

2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

アコルト(12)

久しぶりに雪が降った日。 大学が終わると駅前で小野と待ち合わせした。 バイト代が出たので外食しようと思ったのだ。 携帯がつながらない小野と待ち合わせることにはじめは難渋したが、ここ最近はもう慣れっこになっている。 いくら待たされても、空いた時…

アコルト(11)

小野のピアノはメキメキと上達していった。 つい先日まで音符も読めなかったくせに、今は遅いながらも楽譜を見ながら弾けるようになっている。 ピアノが弾けるようになったら、もう俺は用無しになるのかな… いつしか俺は一番前の席に腰を掛けて、弾いている…

アコルト(10)

料理はみるみるうちに出来上がり、鍋は美味しそうな匂いを漂わせはじめた。 せっかく作ってくれたんだ。一緒に食べようと誘ったが、彼女は断ってさっさと帰って行ってしまった。 小野はなかなか帰ってこなかった。 10時をすぎる頃、やっと玄関が開いた。 …

アコルト(9)

女性はすたすたと先を歩いて無言のままスーパーへ向かった。 身長は俺のほうが大分高いのだが、相手に歩幅を合わせなくても済むくらい足が早かった。 「お友達は何人くるのかしら」 スーパーにつくと、はじめて言葉を発した。 「あ、一人です」 「何鍋にする…

アコルト(8)

小野に楽譜を見せると目を輝かせながらページをめくり始めた。 簡単そうな曲をチョイスして、トーン記号や拍の取り方など基本的なことを教えながら弾いてみせた。 彼はシャーペンを取り出して握り持ちでガリガリメモを取った。 相変わらず癖のある汚い字だが…