チロルの空想世界

オリジナル小説を載せてます。良かったら読んでいってくださいね。

2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

お屋敷の残響(2)

お屋敷の鏡を覗いたらどうなるんだったかしら。思い出せない。確かそれを見るために忍び込んだはずなのに。実際見れたのかどうかも覚えていない。 私は会社から地下鉄で数駅離れたところにマンションを借りている。7階に住んでいるが、周りには雑居ビルが乱…

アコルト(14)

その顔は毎朝見ている顔だった。 いつも朝一緒に通勤しているおじさんだ。 振り払おうとした俺の手をガッチリと掴んでいた。 「大丈夫か」 太く低い声でそう言い、肩を回して立たせてくれた。 力強く、大きな肩だった。 もう一つの足音は、小野にハンカチを…

お屋敷の残響(1)

ーーねぇ。山の麓のお屋敷知ってる? 知ってる知ってる。あの怖い洋館でしょ。 ーーあそこに大きな鏡があってそれを覗いたらね…… 小学生だった私たちは、教室のカーテンに包まって内緒の話をした。埃と太陽の香り。その記憶が今も鼻をくすぐる。 仕事が終わ…

春ですね

梅がちらほら咲きはじめ、春の息吹を感じられる今日このごろ。 いかがお過ごしでしょうか。 久しぶりにお絵かきです。 桜が舞い散る絵を描いてみました。 といいつつ、背景の桜はお借りした画像なのですが(^_^;) 春は出会いと別れの季節。 この絵は「さよう…

アコルト(13)

一瞬のことだった。 なにが起こったのか理解するのに時間を要した。 相手は小野の知り合いかもしれない。 友達同士でふざけているのかもしれない。 「 うまかったぜ」 甘い考えが消えた言葉だった。 男たちは下品にゲラゲラ笑いはじめた。 こいつ!! 一瞬で…