(小説)お屋敷の残響
無事書き終わりました。 最後まで読んで下さった方々、ありがとうございました! スターやブックマークを頂いたことは書く励みになりました。本当にありがとうございますm(__)m このブログでは、あまり肩に力を入れず大体の話しの流れが形になればいいかなく…
頼りないバランスで支えられている私の体。少しでも動いたら落ちてしまう。 ハルナが振り返る。 その顔に助けを求めた。 しかし、彼女は踵を返し、階段を走り降りて行った。 ああ…… そういうことだったんだ。 欠けた記憶のPEACEが全て繋がった瞬間だった。 …
カビと埃を含んだ空気。 そして、饐えた臭いが漂ってきた。 一歩足を踏み出すごとに床がギシギシ鳴る。気をつけないと踏み外してしまいそうだ。 中には家具が置かれたままとなっており、エントランスには灰色になったソファーとサイドテーブル、暖炉が備え付…
行かないと やっぱりあのお屋敷に行かないと! お屋敷へと私の足を動かしている本当の理由が露わになりはじめた。 子供の時、確かに行った。 隣にいるのはハルナ。 彼女は怖がって私の腕にしがみついていた。 私は家を飛び出して山へ向かった。 昨夜通った道…
自分でも知らないうちに「大人」になってしまっていた。 大人っていつから? 成人式迎えたら大人? 責任取れるようになったら? 分別がつくようになったら? 肉体的、社会的、感情的指標。 そんなものを学び、受け入れ、徐々に別のものを失ってきた。 それが…
一歩を踏み出した先は斜面になっていたため、想定した場所に地面がなく、盛大に重心を崩して、また転んだ。 倒れた姿勢のまま少し滑り落ちて、木の葉や枝がガサガサ騒いだ。 しかし、その音のおかげで私の場所が伝わったらしい、相手もこちらに近寄ってきて…
先ほどの岩も記憶より小さく感じたのだ。印は思っているより下の方に付いているのかもしれない。 知らぬ間に私は大きくなっていたのね。小さかった頃の自分の背丈を思い出し少し屈んでみた。 これくらいだったかしら。 身体測定で身長を測っていた時を思い出…
街から離れるにつれ、店も人も少なくなり実家につく頃には明かりもない寂しい夜になっていた。 裏山の山道へ行き先を指定していると、運転手のおじさんがオドオドし始めた。 「ほ、本当にこっちですか?」 何度もバックミラーでこちらを確認している。 こん…
時間がきてお風呂場を覗いてみた。 しかし、排水口に絡まった黒い塊は、所々その長い形状を削いだように千切っただけで、思ったほど溶けていなかった。 もっとたくさんかけれるのかしら? そう思い、まるまる一本かけて時間を多めに取ってみたが、それでも結…
耳鳴りの合間に報道の声を見つけた。 例の捕まった男が自供したという。 被害者の女性が帰宅したのを隣の部屋で待ち構えていて、部屋に引きづりこんだらしい。 はじめは殺すつもりはなかった。しかし、女性が行方不明になったということが思いの外早くに騒ぎ…
お屋敷の鏡を覗いたらどうなるんだったかしら。思い出せない。確かそれを見るために忍び込んだはずなのに。実際見れたのかどうかも覚えていない。 私は会社から地下鉄で数駅離れたところにマンションを借りている。7階に住んでいるが、周りには雑居ビルが乱…
ーーねぇ。山の麓のお屋敷知ってる? 知ってる知ってる。あの怖い洋館でしょ。 ーーあそこに大きな鏡があってそれを覗いたらね…… 小学生だった私たちは、教室のカーテンに包まって内緒の話をした。埃と太陽の香り。その記憶が今も鼻をくすぐる。 仕事が終わ…